久しぶりの海外ロケ。
舞台は北アフリカ、エジプトである。
エジプトは16年前に一度来ているので、今回で二回目だ。
エジプトまでは、成田からドバイまで12時間。
ドバイで5時間のトランジット。
ドバイから4時間飛行機に乗って、ようやくエジプトに到着である。
久しぶりの海外でまず感じたのは、匂いである。
あの何とも言えない異国の匂い。
空港に降り立った瞬間に、一気にエジプトに来たということを身体が感じる。
それは悠長にゆったり
「ここがエジプトかぁ」
などと感じるものではなく、容赦なくたたき込まれるのだ。
独特な匂い、やる気のない風に見える税関、隙あらば追い抜こうとしてくる人々、荷物を勝手に運びお金を要求してくる人。
すべてが、日本人からしたら強烈なのだ。
若干、寝ぼけていたわたしだが、エジプトにたたき起こされ、気がつけば、勝手に荷物を運ぼうとする人や客引きのドライバーに「NO!」と叫んでいた。
ようやく空港の喧噪を抜け、車に乗り、目的のロケーションまでたどりつく頃には、もはやヘトヘトになっていた。
ただ、恐ろしいことに、そのとき時間は朝10時。
ここから一日が始まるのだ。
飛行機で寝たとは言え、全くもって疲れはとれていない。
なんならさっきの喧噪で、どっと疲れがたまった。
ロケ現場までの道中、海外ではよくあるガソリンスタント内のコンビニで、干からびたサラダを買い、それを食べながら、エジプトに来たことを実感した。
そして
「これこれ、これだ、わたしの海外ロケは」
なんだか急激に懐かしくなってきた。
クルー全員、時差ぼけで、干からびたサラダを食べ、カメラを回すのだ。
そして、演者のわたしは、それをカメラの前で文句をいう。
この感じなのである。
結果として、ワクワクしている自分がいる。
そして、どんなに時差ぼけでも、疲れていても、見るとそんなものは吹っ飛ぶピラミッド。
そこにしかないもの、そこに行かないと見られないものがエジプトにはある。
それは、本当に美しく、自然とはまた違う壮大さがある。
今回のエジプトロケで一番好きな景色が、ホテルの屋上から見えるギザの三大ピラミッドである。
そこに沈む夕日は格別であった。
良いも悪いもごちゃ混ぜのそういう混沌とした感情を体験できるのが、海外ロケの醍醐味なのかと今回改めて気づかされたのである。