モザンビークで出会った女性

昨年行ったアフリカのモザンビーク。

わたしにとって初上陸の国、アフリカの中でもかなりディープな場所。

いわゆるthe観光地でもないので、あまり情報がなく、なんというか、わたしのテンションが上がる要素は少なかった。

そんなモザンビークで、国内線移動で飛行機に乗ったときのこと。



アジア人というだけでも珍しいのに、とある日本人女性が一人で搭乗されていた。

到着した空港で荷物を待っている間、我々クルーとお話しさせてもらった。

聞くと、以前NGOの活動で、モザンビークの水道のインフラ整備をされており、今回は休暇を使って、以前いた村へ遊びに来たとのこと。

そして、別れる寸前に笑顔で
「モザンビークとてもいいところなんで、楽しい放送にしてください」

そのあまりにも立派で、素晴らしい生き方に、我々クルーはあっけにとられていた。

一緒にいたアシスタントプロデューサーがぼそりと

「我々の仕事って一体何なんですかね・・・」

異国の人のために尽くしているその女性を見て、素直に思ってしまったのだろう。

確かに我々の仕事には、お医者さんのように、直接人を助けるようなことはできないかもしれない。

けれど、やはりエンタメっていうのは心の栄養剤のようなもので、あることによってじわじわ元気になったり、勇気が湧いたり、ほっこりしたり、笑いまくったり、緊急性はないかもしれないけど、結果豊かな生活に繋がっていると思う。
というか、そう信じたい。
せめて関わっている人間は、そう信じたい。

だから、そのスタッフさんに思わず
「せめて自分たちは誇りを持ってやろうぜ」
とやけに熱く語ってしまった。

そんな熱い気持ちとその女性の言葉を胸に、空港を出て、現場まで4時間移動。

その車が到着したときのこと。
荷物も全く乗らない、直角シートのカーがやってきたのだ。

気がつきゃ、めちゃめちゃ文句を言っていた。

散々言ったあと、さっきの女性の言葉を思い出した。

「モザンビークの楽しいところを放送してください」

さっそく、約束を破ってしまった。
 

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