地獄のディズニー


春休みに、妹や姪っ子が遊びに来たときの話。

高校生、中学生、小学生の姪っ子達にとって、東京に来たら行きたい場所ナンバーワンは、やはり「ディズニーリゾート」である。

これはもう昔から不動の一位であって、大人になったわたしも、やはりディズニーはすこぶるテンションが上がる。

何度行っても、何度体験してもそこは夢の国で、自然と身体から元気が湧いてくるのである。

わたしが小学6年生のとき、ディズニーで迷子になってしまったことがある。
それでも楽しい思い出となり、わたしにとってはパワースポットのような場所である。

今回の春休みでも姪っ子達を連れて、ディズニーシーに出向いた。

前日、わたしは興奮からかあまり眠れず、寝不足ではあったが、きっとディズニーに行ったら眠気など吹っ飛び元気になるわいと、意気揚々と向かった。

途中のコンビニで、妹おすすめのしゃきっとするというレモン系飲料を一気飲みし、いざディズニーシーへ。

春休みということで園内は激混み。
人気のアトラクションは3時間待ち。

なので今回は、乗ったことのない船や、キャラクターグリーティングを楽しんでみようとなった。

まず、よく見るけど乗ったことのない「ヴェネチアン・ゴンドラ」に行ってみると、15分待ち。
これは最高だということで、船旅に出発した。

出発して早々、なんだか胃のあたりがムカムカしてきた。
やばいなと思いつつ、船頭のお姉さんの指示に従い、すれ違う船に「チャオ」と手を振る。
内心「ヘルプ」なのだが、今はとにかく、「なるべく揺れないで」と願うしかない。

ゴールの船着き場に到着する頃にはもう、気持ち悪さがマックスである。

まさかの、ディズニーシーのゴンドラで船酔いである。

ここで余計な仕事をしてくれたのが、先ほど飲んだレモン系飲料である。
酸っぱいものが込み上げてくるのを、後押ししているのだ。

レモンなのか胃液なのか、分からなくなっている。

しかしここは、楽しいディズニー。
姪っ子達の思い出を壊してはいかんと、必死に頑張る。

お腹が空いたというみんな。
一生空かないんじゃないかと思うわたし。

息も絶え絶えにチュロスを買い、体調が回復するのを見守っていたが、限界だった。

妹と姪っ子達に状況を伝え、
「Qちゃん(わたしの名称)は、ここからはひたすらベンチで待っている。みんなで楽しんで来い」
と言った。

みんな心配してくれて医務室を勧めてくれたが、なんの意地か、もう少しベンチで粘る決断をする。



寝不足・レモン飲料・ゴンドラ・船酔い。
なんて情けないのだ。

そんなQちゃんを後に、4人はミニーと写真を撮りに行った。

ディズニーのベンチでリュックにもたれかかり、トイレとの往復で時を過ごすという体験を初めてした。

通り過ぎるみんな、笑顔で幸せそうにしている。

船酔いで横たわっているのは、多分わたしだけだ。
はじめは、「バレたらどうしよう」とか思って下を向いていたが、みんな他人など見ていない。
園内には見るべきものが多すぎて、ベンチに横たわっているイモトになど誰も気づかない。

だんだんと眠気も襲ってきて、本当に夢の国にいるような感覚だった。

その日わたしは、夕方までそのベンチにいた。
その頃には気持ち悪さも消え、通常運転になっていた。

しかしもう帰宅する時間。
ゴンドラに乗って、その後はほぼベンチという過ごし方を経験した。

こんなにも俯瞰で見たディズニーは初めてである。

結果としては、記憶に残る一日になった。

完全に復活したわたしの内蔵。
何も食べていないのもあり、腹が減ったわたしは、帰りに巨大ステーキという賭けに出て、その賭けに勝った。

貴重なディズニー体験であった。
 

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