春休みに、姪っ子達が東京に遊びに来たときの話。
高校生になるゆあちゃんと、中学2年生になるもあちゃんと原宿に遊びに行った。
目的は、スニーカー好きのもあちゃんが、ぜひとも「スニダン」に行ってみたいとのこと。
「スニダン?」
38歳のQちゃん(昔からそう呼ばれている)は初耳である。
調べると「スニーカーダンク」という、プレミアが付いたり、珍しいスニーカーが置いてある中高生に人気のお店だ。
なもので、お値段の方もプレミアムなものが多く、もあちゃんとしては、買えないけど博物館的な感覚で愛でたいという。
しかし、道中しきりに2人の会話で
「マー君いたらどうしよう」
と謎の会話をしている。
マー君?
38歳のQちゃんは、マー君といえば田中のマー君しか思いつかない。
2人に聞くと、なにやらとんでもないお金持ちの「まぁくん」というのがスニダン周辺にうろうろしていて、まぁくんに話しかけられると、欲しいスニーカーを買ってもらえるのだという。
動画もたくさん上がっていて、本当にその通りだった。
2人とも、まぁくんに会えたらワンチャン、スニーカーを買ってもらえるかもとウキウキしているではないか。
こうなってくると、Qちゃんも黙っていられない。
「Qちゃんだって全然買えるし」
まぁくんへ謎の対抗心が湧いてきた。
お店に入ると、壁一面に並んでいる珍しいスニーカー。
すると、まさかのほぼ付き添いの方のゆあちゃんが、ナイキのピンクのジョーダンを見つけ、履いてみたいと言い出した。
試着しながら
「どうかなどうかな」
と聞いてくる。
格好いいとは思うけど、値段を見ると
「56,000円!」
「欲しい」
ひぃぃいいである。
しかも、何の知識も価値も分かっておらず、ただ妹についてきて可愛いかもと思って今に至る。
さすがに、親の観点からしてもこれは良くない。
ただ、脳裏にまぁくんがちらついた。
まぁくんが今来たら、、、と怯えたが、冷静になって必死に説得した。
「ゆあちゃんは前から欲しかったわけでもない。このスニーカーがどういうものか、どんな価値があるのか知らないよね。たまたまいま来て、可愛いから56,000円の欲しいはちょっと違くない?」
すると
「だって一目惚れしたんだもん」
ひぃぃぃぃぃい。
このとき思った。
わたしもそうだと。
わたしも欲しいものを買うとき、価値がどうとか歴史がどうとか考えない。
まさしく一目惚れ派。
ゆあちゃんに打ちのめされ、あやうく財布の紐が緩みそうだったが、ぴったりのサイズがいま在庫切れであった。
神様ありがとう。
結果、もあちゃんの欲しいものがもう少し手頃で、サイズもあったためそちらを購入し、スニダンを後にした。
その日の夜、興奮気味に2人がスマホを見ながら
「今日あの後スニダンにまぁくんが現れたって」
危機一髪であった。
まぁくんがいたら、迷わず変なプライドで、ゆあちゃんのスニーカーも買うはめになっていただろう。
しばらくスニダンには近づくまい。